nitomath’s blog

分からなかったことのメモ

トランジスタでLチカする回路の設計手順

npn型トランジスタのコレクタに赤色LEDを繋いでLチカさせるときの回路を設計します。

回路は下図のようなものです。

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トランジスタでLチカする回路

これから順番にそれぞれの値を決めていきます。

トランジスタ2SC1815Y(リンク先は秋月電子です)を使用する想定で設計します(データシートはこちら)。 この記事中に載せているすべてのグラフは、このデータシートからの引用です。

電源電圧

電源電圧 Eとしては、あまり大きすぎない、適当な値を設定してください。 私は E=5~\mathrm{V}でやりました。*1

LEDの端子間電圧と電流

まずは回路の上側(コレクタ電流 I_Cが流れるところ)から先に決めていきます。

今回の回路では、LEDを流れる電流はコレクタ電流 I_Cとなります。

赤色LEDを使用する場合は、端子間電圧 V _{LED} 2~\mathrm{V}程度、LEDを流れる電流 I_C 20~\mathrm{mA}程度として計算すればいいと思います。*2

コレクタ・エミッタ間電圧

すでにコレクタ電流は決めたので、このグラフをもとにコレクタ・エミッタ間電圧を決めます。

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コレクタ電流とコレクタ・エミッタ間電圧の関係

コレクタ電流は 20~[\mathrm{mA}]としました。 そこで、 I_C=20のときの V_{CE}をグラフから読み取ると……ベース電流 I_Bがいくつであっても、コレクタ・エミッタ間電圧はほとんど 0~\mathrm{V}であることがわかります。*3*4

ということで、以下では V_{CE}\fallingdotseq0~[\mathrm{V}]とします。

コレクタ抵抗

続いて、トランジスタのコレクタに繋いでいる抵抗(以下、コレクタ抵抗)の値を決めます。 電源電圧 E、コレクタ抵抗の端子間電圧 V_{RC}、LEDの端子間電圧 V_{LED}、コレクタ・エミッタ間電圧 V_{CE}の間には次式の関係が成り立ちます。

\displaystyle{
E=V _{RC}+V _{LED}+V _{CE}
}

なので、

\displaystyle{
V _{RC}=E-V _{CE}-V _{LED}
}

となります。

オームの法則 V=RI)を使えば、

\displaystyle{
R_C=\dfrac{V _{RC}}{I _C}=\dfrac{E-V _{CE}-V _{LED}}{I _C}
}

となり、コレクタ抵抗の値を求められます。 今回は E=5~\mathrm{V},~V_{CE}\fallingdotseq0~\mathrm{V},~V_{LED}=2~\mathrm{V},~I_{C}=20~\mathrm{mA}なので、計算すると R_{C}=150~[\mathrm{\Omega}]となります。

ベース電流

続いて、真ん中の回路を流れるベース電流 I_Bを決めます。

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直流電流増幅率とコレクタ電流の関係

上図は直流電流増幅率とコレクタ電流の関係を表したグラフです。

トランジスタを使うのは一般的な部屋の中なので T_a=25として、 I_C=20のときの値を見ると、 h_{FE}=110となっています。 ここから、

\displaystyle{
I_B=\dfrac{I_C}{h_{FE}}=\dfrac{20\times10^{-3}}{110}\fallingdotseq182~[\mathrm{\mu A}]
}

となり、必要なベース電流が求まります。

ベース・エミッタ間電圧

ベース電流を決めた次はベース・エミッタ間電圧 V_{BE}を決めます。*5

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ベース電流とベース・エミッタ間電圧の関係

ベース電流とベース・エミッタ間電圧の関係

上図はベース電流とベース・エミッタ間電圧の関係を表したグラフです。 ベース電流を決めたときと同じく、 T_a=25とします。 今回は I_B=182なので、グラフをから V_{BE}=0.7~[\mathrm{V}]程度と決まります。

ベース抵抗

最後に、ベース抵抗の値 R_Bを決めます。 ベース・エミッタ間電圧が V_{BE}=0.7、電源電圧が E=5なので、ベース抵抗の端子間電圧 V_{RB}

\displaystyle{
V_{RB}=E-V_{BE}=5-0.7=4.3~[\mathrm{V}]
}

となります。

ベース電流が I_B=182~[\mathrm{\mu A}]であることとオームの法則から、ベース抵抗の値 R_B

\displaystyle{
R _B=\dfrac{V_{RB}}{I_{B}}=\dfrac{4.3}{182\times10^{-6}}\fallingdotseq23.6~[\mathrm{k\Omega}]
}

となります。

さいごに

これまでに決めた値を書き込んだ回路図を載せます。

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*1:Arduino 5~\mathrm{V}ピンを電源として使ったため

*2:データシートがある場合はそれを見て決めてください。私はなかったので本文のような感じでテキトーに決めました。

*3:実際にはコレクタ・エミッタ間飽和電圧なんかを考慮しなければいけないのかもしれない……?

*4: V_{CE}=0で計算してるのは怪しいと思っています。(使ったトランジスタは違うやつだけど)こんな回路を作ったときに V_{CE}=0.075ありましたし。

*5:ここは真面目にやらずに、「ベース・エミッタ間電圧とかだいたい 0.7\sim0.8~\mathrm{V}でしょ」くらいでもこの程度の回路ならいいと思います。というか私は面倒だったのでそうしました。