RLC直列回路の力率角と有効電力の関係をグラフから考える
交流回路の電力
交流回路では3種類の電力があります。 それは、
- 皮相電力:]
- 有効電力:]
- 無効電力:]
です。 、は電圧と電流の実効値です。
2番目の有効電力が実際に回路が消費する電力です。 単に「電力」と呼ばれることもあります。
有効電力()の の部分は力率と呼ばれ、皮相電力に対する有効電力の割合を示します。また、 を力率角と呼びます。 (あとで述べますが、力率角はインピーダンス角と一致します。)
力率が大きいほど、有効電力は大きくなります。 つまり、有効電力は ()のときに最大( )となり、()のときに最小( )となります。*1
この記事では、力率(角)と有効電力の関係について、瞬時電力のグラフをもとに考えてみます。
瞬時電力と有効電力の関係
まず、瞬時電力と有効電力の関係をはっきりさせましょう。 ……とはいっても、難しいものではありません。 有効電力は瞬時電力の平均値。これだけです。
下図のようなRLC回路で瞬時電力と有効電力の関係を考えます。
インピーダンス角*2が 、電源の角周波数が 、電圧が電流に対して遅れているとすると、電流の瞬時値 は
電圧の瞬時値 は
です。 ここで、電流と電圧の周期 は
です。
ある瞬間に消費される電力は、その瞬間の電流 と電圧 の積なので、電力の瞬時値 は
となります。
有効電力 は電力の瞬時値の平均です。 つまり、電力の瞬時値 を の範囲で積分し、それを で割ったものが有効電力となります。
力率角=インピーダンス角
上式を計算すると
となります。*3
この記事の最初の方で、
有効電力()の の部分は力率と呼ばれ、皮相電力に対する有効電力の割合を示します。また、 を力率角と呼びます。
と述べました。 今回の計算結果()を見ると、力率角の位置にインピーダンス角 があります。 つまり、RLC直列回路において、力率角はインピーダンス角に一致するということです。
インピーダンス角と有効電力の関係
さて、ここからこの記事で一番やりたかったことに入ります。
インピーダンス角 が大きくなるほど、RLC直列回路の有効電力 は小さくなります。 そりゃあそうです。 を見れば当たり前です。
では、このことを電力の瞬時値のグラフから理解できないでしょうか。
電力の瞬時値のグラフ
電力の瞬時値 は電流の瞬時値と電圧の瞬時値の積として表せました。
話を単純にするために、この式を簡単にしたものが
です。*4
そして、下図は のときのグラフです。
のときは常に ですが、それ以外では となる が存在します。
面積と有効電力
有効電力 は電力の瞬時値の平均を取ることで得られました。
つまり、有効電力を求めるさいに、 の定積分を計算しています。
定積分を計算しているということは と 軸が囲む符号付き面積を計算しているということです。 電力の瞬時値 のグラフを見てみると、 が大きくなるほどに となる の範囲が増えています。 つまり、負の面積が増えているということです。 負の面積が増えるということは、それだけ定積分の結果は小さくなります。 したがって、負の面積が増えるほど、有効電力も小さくなります。
まとめ
RLC直列回路のインピーダンス角 が大きくなると、有効電力 は小さくなります。 この記事では、このことを電力の瞬時値 のグラフから考えました。
電力の瞬時値のグラフは、 のときは常に でしたが、それ以外では となる が存在しました。 そして、 が大きくなるほど となる の範囲は大きくなりました。 それにともない、 における の定積分は小さくなりました。 結果として、有効電力 も小さくなりました。