電圧増幅度と電流増幅度と電力増幅度をhパラメータで表す
電圧増幅度、電流増幅度、電力増幅度をトランジスタのhパラメータで表現します。*1 なお、ここではエミッタ接地を前提として話を進めます。 つまり、入力電流(電圧)はベース電流(ベース・エミッタ間電圧)のことであり、出力電流(電圧)はコレクタ電流(コレクタ・エミッタ間電圧)のことを指します。
最初に各増幅度とhパラメータの定義を確認します。
電圧増幅度、電流増幅度、電力増幅度はそれぞれ、以下のようになります。
hパラメータである出力アドミタンス、電流増幅率、入力インピーダンス、電圧帰還率の定義はそれぞれ以下のようになります。
以上の式において、、はそれぞれ出力電圧と入力電圧、、はそれぞれ出力電流と入力電流、、はそれぞれ出力電力と入力電力を表します。
電圧増幅度
負荷抵抗がであるとすると、オームの法則から出力電圧は
と表せます。したがって、電圧増幅度の定義から、
となります。
次に、入力インピーダンスを用いれば入力電圧はとなるので、
さいごに、出力電流と入力電流を電流増幅率を使って表せば、
となり、電圧増幅度をhパラメータ(と負荷抵抗)で表せます。
電流増幅度
これはそのまま電流増幅率と一致します。
電力増幅度
以前の記事で、電力増幅度は電圧増幅度と電流増幅度の積で表せるという話をしました。
そのことを用いれば、
とすることで、電力増幅度をhパラメータで表せます。
トランジスタでLチカする回路の設計手順
npn型トランジスタのコレクタに赤色LEDを繋いでLチカさせるときの回路を設計します。
回路は下図のようなものです。
これから順番にそれぞれの値を決めていきます。
トランジスタは2SC1815Y(リンク先は秋月電子です)を使用する想定で設計します(データシートはこちら)。 この記事中に載せているすべてのグラフは、このデータシートからの引用です。
電源電圧
電源電圧としては、あまり大きすぎない、適当な値を設定してください。 私はでやりました。*1
LEDの端子間電圧と電流
まずは回路の上側(コレクタ電流が流れるところ)から先に決めていきます。
今回の回路では、LEDを流れる電流はコレクタ電流となります。
赤色LEDを使用する場合は、端子間電圧を程度、LEDを流れる電流を程度として計算すればいいと思います。*2
コレクタ・エミッタ間電圧
すでにコレクタ電流は決めたので、このグラフをもとにコレクタ・エミッタ間電圧を決めます。
コレクタ電流は]としました。 そこで、のときのをグラフから読み取ると……ベース電流がいくつであっても、コレクタ・エミッタ間電圧はほとんどであることがわかります。*3*4
ということで、以下では]とします。
コレクタ抵抗
続いて、トランジスタのコレクタに繋いでいる抵抗(以下、コレクタ抵抗)の値を決めます。 電源電圧、コレクタ抵抗の端子間電圧、LEDの端子間電圧、コレクタ・エミッタ間電圧の間には次式の関係が成り立ちます。
なので、
となります。
オームの法則()を使えば、
となり、コレクタ抵抗の値を求められます。 今回はなので、計算すると]となります。
ベース電流
続いて、真ん中の回路を流れるベース電流を決めます。
上図は直流電流増幅率とコレクタ電流の関係を表したグラフです。
トランジスタを使うのは一般的な部屋の中なのでとして、のときの値を見ると、となっています。 ここから、
となり、必要なベース電流が求まります。
ベース・エミッタ間電圧
ベース電流を決めた次はベース・エミッタ間電圧を決めます。*5
上図はベース電流とベース・エミッタ間電圧の関係を表したグラフです。 ベース電流を決めたときと同じく、とします。 今回はなので、グラフをから]程度と決まります。
ベース抵抗
最後に、ベース抵抗の値を決めます。 ベース・エミッタ間電圧が、電源電圧がなので、ベース抵抗の端子間電圧は
となります。
ベース電流が]であることとオームの法則から、ベース抵抗の値は
となります。
さいごに
これまでに決めた値を書き込んだ回路図を載せます。
コンバータとインバータとは何か
日本の家庭用コンセントにはかの交流が来ています。 普段、私達はコンセントにパソコンやスマホを繋いで使用していますが、パソコンやスマホは直流で動作するように作られています。
このように交流電源(コンセント)に直流で動く機器(パソコンやスマホ等)を接続して機器を動かせるのは、電気を交流から直流へ変換する回路が電源と機器の間に存在するからです。
ACアダプタという言葉を聞いたことがあるでしょうか。 スマホの充電器でいえばコンセントに挿す、直方体になっているところです。 ノートパソコンでいえば、電源コードの途中にある直方体になっているところです。
ACアダプタの内部には交流を直流へと変換する回路が含まれています。*1 そのため、交流が出てくるコンセントと直流で動くスマホやパソコンを接続しても、なんの不自由なくそれらの機器を使うことができます。
このような交流を直流へと変換するものをコンバータと言います。 反対に、直流を交流へと変換するものをインバータといいます。
コンバータは、例えばダイオードの整流素子を用いることで交流から直流への変換を実現しています。 インバータは、例えばスイッチを用いて出力へ流れる電流の向きを変えることで直流から交流への変換を実現しています。
*1:実際には交流を直流へと変換する回路だけでなく、電圧を下げるためのトランスや電流を安定させる安定化回路も含まれます
「電圧はかかっているが電流は流れていない状態」を実際に計測する
下図のような回路(?)があるとします。*1
このとき、点Bと点Cの電圧は]ですが、これらの点を流れている電流はです。 このように、「電圧がでなくとも、電流が流れないことがある」ということを知識としては知っていますが、実際にこのような回路で計測したことはありませんでした。
ということで、実際に計測をして「電圧がでなくとも、電流が流れないことがある」ことを確かめてみました。
適当な回路を組んでBC間の電位差(抵抗の端子間電圧)を計測した結果が次の画像です。電源電圧は]としました。
結果は! オームの法則より、抵抗の端子間電圧がということは抵抗を流れている電流はであると言えます! つまり、電流は流れていない!!
……至極当然のことを確かめる結果となりました。 しかし、理論や知識として知っていることを実際に確かめるのは楽しいです。
おまけ
AC間の電圧がであることを確かめています。
*1:繋がっていないので回路と呼べるのかわかりませんが、なんと呼べばいいのかわからないのでとりあえずこの記事では回路で通します。
電力増幅度は電流増幅度と電圧増幅度の積になる
電流増幅度は、入力電流を、出力電流をとすると、
と表せます。
電圧増幅度は、入力電圧を、出力電圧をとすると、
と表せます。
電力増幅度は、入力電力を、出力電力をとすると、
と表せます。
電力は電流と電圧の積()なので、電力増幅度は、
というふうに、電流増幅度と電圧増幅度の積で表せます。
このことは当たり前といえば当たり前ですが、知ったとき、個人的には「整合性が取れているな」と感じました。
回路のデッドタイムとはなにものか
4個のスイッチ()を使ったHブリッジ回路について考えます。 スイッチは左上が、右上が、左下が、右下がとします。
Hブリッジ回路はDCモータを駆動するために使われる回路です。*1 DCモータを回転させているとき、回路は次の2つの状態を取ります。
- とがON。とがOFF。(モータ正転)
- とがOFF。とがON。(モータ逆転)
この2つの状態を切り替えるとき(例えば、正転させていたモータを逆転させるとき)、デッドタイムというすべてのスイッチがOFFになっている時間を設ける必要があります。 回路が短絡(ショート)し、大きな電流(貫通電流)が流れるのを防ぐためです。
回路が短絡するのは高電位側と低電位側が直接繋がったときです。 モータの正転と逆転を切り替えるとき、一瞬でも
- とがONになるか、
- とがONになるか、
- 両方が同時に起きる
とモータを通らないルートができてしまうため、回路が短絡し、貫通電流が発生します。
*1:モータを一方向に回転させたいだけならHブリッジ回路は必要ありません。モータを二方向に回転させたい(正転・逆転させたい)となると必要になります。
RC回路におけるコンデンサ充電時の電流、電圧、電荷を求める
この記事では、起電力の電源、スイッチ、静電容量のコンデンサ、抵抗値の抵抗が直列接続された回路(RC直列回路)を考えます。 そして、過渡状態における回路を流れる電流、コンデンサの両端にかかる電圧、コンデンサに蓄えられる電荷を求めます。
時刻でスイッチをONにします。 そのとき、電荷がコンデンサに一瞬で蓄えられるわけではありません。 つまり、コンデンサに蓄えられている電荷は
という式では表せません。
実際には、スイッチがONになってからの間、蓄えられている電荷がからにまで連続的に変化する期間(過渡状態)があります。 つまり、
という関数が存在します。 この記事の最終目標はこの関数を求めることです。 そのために、まず過渡状態における電流と電圧を求めます。
電流
過渡状態の電流をとします。
抵抗による電圧降下を、コンデンサの両端の電位差をとします。 このとき、電源の起電力がなので、キルヒホッフの法則より、
がなりたちます。
はオームの法則より、
なので、
コンデンサの両端にの電圧がかかっているとき、蓄えられている電荷がであることと、電荷は電流を時間で積分したものであることより、
が得られます。 これを解くことで過渡状態における電流が求められます。
初期条件 *1と、考えている範囲()において常にである*2ことより、微分方程式の解は
となり、過渡状態における電流が求まります。
電圧
電圧はオームの法則とキルヒホッフの法則から求まります。 この2つを考慮すると、コンデンサの両端にかかる電圧は
であることがわかります。
これに先程の電流の式を代入すれば、
となり、過渡状態における電圧が求まります。
ちなみに、抵抗による電圧降下は
とあらわせます。
電荷
過渡状態におけるコンデンサに蓄えられる電荷は、さきほど求めた電圧を使って、
となります。
との極限を考えると、
となっており、過渡状態には電荷がからまで連続的に変化することがわかります。