nitomath’s blog

分からなかったことのメモ

RL直列回路の過渡状態の電流・電圧を求める

RL直列回路の過渡状態における電流と電圧を求めます。 回路の初期状態は下図のようなものであるとします。

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RL直列回路の初期状態

はじめ、スイッチ SWはB側にあり、回路を流れる電流は 0であるとします。

スイッチをBからAに変えた瞬間

電流や電圧の正の方向を下図のように定めます。

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スイッチがA側にあるときの回路の様子

このとき、以下の3つの式が成り立ちます。

\displaystyle{
E=V_R+V_L~\text{(キルヒホッフの第二法則)} \\
V_R=RI_A~\text{(オームの法則)} \\
V_L=L\dfrac{\mathrm{d}I_A}{\mathrm{d}t}~\text{(自己誘導起電力)}
}

これらをまとめると、次の微分方程式が得られます。

\displaystyle{
L\dfrac{\mathrm{d}I_A}{\mathrm{d}t}=-R\left(I_A-\dfrac{E}{R}\right)
}

これを解くと、一般解として

\displaystyle{
I_A=\dfrac{E}{R}-A\exp\left(-\dfrac{R}{L}t\right)
}

が得られます。 ただし、 A積分定数です。

この I_Aオームの法則、自己誘導起電力の式に代入することで、抵抗の端子間電圧とコイルの自己誘導起電力を求められます。 それぞれ、

\displaystyle{
V_R=E-AR\exp\left(-\dfrac{R}{L}t\right) \\
V_L=AR\exp\left(-\dfrac{R}{L}t\right)
}

となります。

スイッチをAからBに変えた瞬間

電流や電圧の正の方向を下図のように定めます。

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スイッチがB側にあるときの回路の様子

このとき、以下の3つの式が成り立ちます。

\displaystyle{
V_R+V_L=0~\text{(キルヒホッフの第二法則)} \\
V_R=RI_B~\text{(オームの法則)} \\
V_L=L\dfrac{\mathrm{d}I_B}{\mathrm{d}t}~\text{(自己誘導起電力)} \\
}

これらをまとめると、次の微分方程式が得られます。

\displaystyle{
L\dfrac{\mathrm{d}I_B}{\mathrm{d}t}=-RI_B
}

これを解くと、一般解として

\displaystyle{
I_B=B\exp\left(-\dfrac{R}{L}t\right)
}

が得られます。 ただし、 B積分定数です。

この I_Bオームの法則、自己誘導起電力の式に代入することで、抵抗の端子間電圧とコイルの自己誘導起電力を求められます。 それぞれ、

\displaystyle{
V_R=BR\exp\left(-\dfrac{R}{L}t\right) \\
V_L=-BR\exp\left(-\dfrac{R}{L}t\right)
}

となります。

コンデンサ入力型平滑回路のシミュレーション

コンデンサ入力型平滑回路(と全波整流回路)のシミュレーションを行います。 回路は以下のようなものを想定しています。 なお、ダイオードにおける電圧降下はないものとします。

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コンデンサ入力型平滑回路

シミュレーションにおける入力電圧と抵抗値は以下のとおりです。

\displaystyle{
v_i = 100 \sin(100\pi t) ~[\mathrm{V}]\\
R = 100 ~[\mathrm{\Omega}]
}

静電容量は C=100,~500,~1000~[\mathrm{\mu F}]の3種類でシミュレーションを行いました。 コンデンサ入力型平滑回路では静電容量と抵抗の積 CRが大きくなるほど、放電のスピードが遅くなります。 それを確かめるために、静電容量は3種類の値を用意しました。

シミュレーション結果は下図のとおりです。  t=0.005まではすべて一致していますが、コンデンサが放電しているときの出力電圧に違いが見られます。 静電容量が大きいほど、つまり CRが大きいほど、放電のスピードが遅く、再び充電が始まるときの電圧が大きくなっています。

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シミュレーション結果

 Rが大きいと放電スピードが遅いのは、抵抗値が大きいと電流が流れにくくてコンデンサに蓄えられた電荷を消費するのに時間がかかるということでしょうかね。  Cが大きいと放電スピードが遅いのは、たくさん電荷を蓄えられる分、電流が多く流れてもコンデンサの端子間電圧の減少を小さく抑えられるということでしょうかね。

シミュレーションのコードは以下のgistにあります。

200812.py · GitHub

コンデンサが放電するとき(過渡状態)の電荷・電流・電圧の変化を表す式を導出する

以前、コンデンサが充電するときの過渡状態の式を導出しました。

nitomath.hatenablog.jp

今回は、充電されて電荷 Q蓄えたコンデンサが放電するときの式を導出します。

初期状態

回路は最初、下図のような状態であるとします。 回路は

から構成されています。 コンデンサに蓄えられた電荷は、図で見て上側が正、下側が負です。 このとき、図には書いていませんがコンデンサの端子間電圧 V_C Q_0/Cです。

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初期状態

電荷の式を求める

上図ではスイッチがOFFなので電流は流れていませんが、下図のようにスイッチをONにするとコンデンサに蓄えられた電荷が移動して電流が流れます。 このとき、時刻 tにおけるコンデンサに蓄えられている電荷 Q、電流を Iとすれば、

となります。 なお、ここでは、下図のように電流の正の向き、コンデンサと抵抗の端子間電圧の正の向きを決めます。

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スイッチを閉じると電流が流れ始める。

電圧のキルヒホッフの法則より、コンデンサの端子間電圧と抵抗の端子間電圧について以下の式が成り立ちます。

\displaystyle{
\dfrac{Q}{C}=RI
}

今は電荷の式を求めたいので、電流 I電荷 Qで表します。

コンデンサが放電するとき、電流が上図で定めた正の方向に流れることは直感的に明らかです。 しかし、

\displaystyle{
I = \dfrac{dQ}{dt}
}

の式を用いて電流 I電荷 Qで表してしまうと、 dQ/dt\lt0なので電流が負の方向(図の矢印とは逆の方向)に流れてしまいます。 なので、今回は左辺に負号をつけた

\displaystyle{
I = -\dfrac{dQ}{dt}
}

を用いることで、 I Qで表します。

すると、キルヒホッフの式から

\displaystyle{
\dfrac{Q}{C}=-R\dfrac{dQ}{dt}
}

という電荷 Q微分方程式が得られます。 初期条件(時刻 0コンデンサに蓄えられていた電荷 Q_0であったこと)を考慮してこの解を求めると、

\displaystyle{
Q=Q_0\exp\left(-\dfrac{t}{RC}\right)
}

となります。

電流の式

電流 Iの変化は、

\displaystyle{
I = -\dfrac{dQ}{dt}
}

\displaystyle{
Q=Q_0\exp\left(-\dfrac{t}{RC}\right)
}

より、

\displaystyle{
I=\dfrac{Q_0}{RC}\exp\left(-\dfrac{t}{RC}\right)
}

となります。

電圧の式

抵抗の端子間電圧 V_Rの変化はオームの法則より、

\displaystyle{
I=\dfrac{Q_0}{C}\exp\left(-\dfrac{t}{RC}\right)
}

となります。

キルヒホッフの法則を考慮すれば、コンデンサの端子間電圧 V_C V_Rと同じ式で表されることがわかります。

NANDゲートだけでNOT、AND、OR、NOR、XORを構成する

NANDゲートは論理ゲートのひとつで、 A Bを入力とし、 Xを出力としたとき、その真理値表は以下のようになります。

A B X
0 0 1
1 0 1
0 1 1
1 1 0

この記事では、NANDゲートだけで他の論理回路(NOT、AND、OR、NOR、XOR)を作る方法の一例を示します*1。 といっても、この記事は次に画像を一枚だけ貼って終わりです。 各論理回路が正しいことは、ぜひご自身で確かめてみてください。

以下では A Bを入力とし、 Xを出力としています。 点線の四角はわかりやすさのために付け足しています。 点線の四角形で囲まれた内部は、その四角形内左上に書かれた論理ゲートとなっています。

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NANDから他の論理回路を作る

*1:NANDゲートから他の論理回路を構成できることを、NAND論理の完全性といいます

NAND回路の原理

先日の記事でNAND回路のシンプルな例を示しました。 今日はその回路が本当にNAND回路になるのかを確かめていきます。

説明には下図を用います。 上述の記事ではトランジスタの回路例とスイッチの回路例を載せましたが、今回はスイッチの回路例だけを用います。 なお、この記事では出力電圧が正ならHigh、ゼロ以下ならLowであるとします。

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NAND回路](

A=Low,B=Lowのとき

2つの入力がともにLow(つまり、スイッチがともにOFF)のとき、NANDの出力はHighになります。 このことを確認します。

スイッチがともにOFFのとき、電流は下図の赤矢印のように流れます。

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入力がともにLowの場合、出力はHighになる

スイッチ S_1(入力A)がOFFであるため、左下の回路には電流は流れません。 このとき、点αの電圧は 2 \mathrm{V}になります。 つまり、出力電圧は V_o=2であり 0 \mathrm{V}ではありません。 したがって、出力はHighになります。

A=High, B=Lowのとき

入力AがHighで入力BがLow(つまり、スイッチ S_1だけがONで S_2だけがOFF)のとき、NANDの出力はHighになります。

このとき、電流は「A=Low、B=Lowのとき」の説明で示した図のように流れます。 スイッチ S_2(入力B)がOFFであるため、左下の回路には電流が流れないためです。 このとき、点αの電圧は先ほどと同様に 2 \mathrm{V}になります。 そして、出力も同様にHighになります。

A=Low, B=Highのとき

この場合は、先程の「A=High, B=Lowのとき」と同じです。 違うのはOFFになっているスイッチの場所だけです。 左下の回路には電流が流れないため、点αの電圧が 2 \mathrm{V}であることと、出力がHighであることは変わりません。

A=High, B=Highのとき

2つの入力がともにHigh(つまり、スイッチがともにON)のとき、NANDの出力はLowになります。

このときの電流の流れは下図のようになります。 今回は、上記の3つの場合と異なり、電流が左下の回路に流れています。

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入力がともにHighの場合、出力はLowになる

点αはスイッチ S_1 S_2を介してグラウンドと繋がっています。 そのため、点αの電圧は 0 \mathrm{V}となります。 電圧が 0 \mathrm{V}なので、抵抗が存在する右側の回路に電流は流れません。 抵抗に電流が流れるには電圧降下が必要ですが、今回の場合は抵抗の下側がグラウンド、つまり 0\mathrm{V}に接続しているため、同じく 0 \mathrm{V}の点αからでは電圧降下を起こせません。

結局、この場合は出力電圧が V_o=0となるので、出力はLowとなります。

NAND回路の中身

NAND回路は論理回路のひとつです。 その真理値表は入力をA、B、出力をXとすると次のようになります。

A B X
0 0 1
1 0 1
0 1 1
1 1 0

NAND回路の原理をシンプルなもので表現すると、下図のようになります。

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NAND回路の原理

トランジスタ Tr_1のベースが入力A、トランジスタ Tr_2のベースが入力Bに対応しています。 そして、 Tr_1のコレクタがNAND回路の出力となっています。

これはトランジスタをスイッチング素子として用いています。 トランジスタをスイッチに置き換えると下図のような回路になります。

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トランジスタをスイッチに置き換えた回路

インバータの原理

インバータは直流を交流に変換する回路です。 この記事では、その原理について述べます。

次のようなHブリッジ回路について考えます。 負荷抵抗 R_Lの端子間電圧が出力電圧です。

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Hブリッジ回路

この回路で、スイッチ S_1 S_4をON、スイッチ S_2 S_3をOFFにします。 すると、下図の赤矢印のように電流が流れます。

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S1とS4がONのときの電流

電流は負荷抵抗を左から右へと流れているので、スイッチ S_1のある左側が高電位で、スイッチ S_4のある右側が低電位です。

次に、スイッチ S_2 S_3がONで、スイッチ S_1 S_4はOFFの場合を考えます。 すると、下図の赤矢印のように電流が流れます。

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S2とS3がONのときの電流

今度はスイッチ S_1 S_4がONだった場合とは逆に、電流は負荷抵抗を右から左へと流れます。 つまり、スイッチ S_2のある右側が高電位で、スイッチ S_3のある左側が低電位です。

したがって、

  1. スイッチ S_1 S_4がON、スイッチ S_2 S_3はOFFの場合は左側が高電位で右側が低電位
  2. スイッチ S_2 S_3がON、スイッチ S_1 S_4はOFFの場合は右側が高電位で左側が低電位

というふうに、どのスイッチをONにするかで負荷抵抗にかかる電圧の方向を変えることができます。

この1と2を交互に行うことで、負荷抵抗に交流電圧をかけることができます。 つまり、4つのスイッチを操作することで、直流電源しかない回路から交流電圧をつくることができるのです。 これが、インバータの原理です。

おまけ(デッドタイム

スイッチ S_1 S_4がONの状態からスイッチ S_2 S_3がONの状態へ切り替えるとき(あるいはその逆をするとき)、すべてのスイッチがOFFの期間(デッドタイム)を設ける必要があります。

nitomath.hatenablog.jp