RL直列回路の過渡状態の電流・電圧を求める
RL直列回路の過渡状態における電流と電圧を求めます。 回路の初期状態は下図のようなものであるとします。
はじめ、スイッチはB側にあり、回路を流れる電流はであるとします。
スイッチをBからAに変えた瞬間
電流や電圧の正の方向を下図のように定めます。
このとき、以下の3つの式が成り立ちます。
これらをまとめると、次の微分方程式が得られます。
これを解くと、一般解として
が得られます。 ただし、は積分定数です。
このをオームの法則、自己誘導起電力の式に代入することで、抵抗の端子間電圧とコイルの自己誘導起電力を求められます。 それぞれ、
となります。
スイッチをAからBに変えた瞬間
電流や電圧の正の方向を下図のように定めます。
このとき、以下の3つの式が成り立ちます。
これらをまとめると、次の微分方程式が得られます。
これを解くと、一般解として
が得られます。 ただし、は積分定数です。
このをオームの法則、自己誘導起電力の式に代入することで、抵抗の端子間電圧とコイルの自己誘導起電力を求められます。 それぞれ、
となります。
コンデンサ入力型平滑回路のシミュレーション
コンデンサ入力型平滑回路(と全波整流回路)のシミュレーションを行います。 回路は以下のようなものを想定しています。 なお、ダイオードにおける電圧降下はないものとします。
シミュレーションにおける入力電圧と抵抗値は以下のとおりです。
静電容量は]の3種類でシミュレーションを行いました。 コンデンサ入力型平滑回路では静電容量と抵抗の積が大きくなるほど、放電のスピードが遅くなります。 それを確かめるために、静電容量は3種類の値を用意しました。
シミュレーション結果は下図のとおりです。 まではすべて一致していますが、コンデンサが放電しているときの出力電圧に違いが見られます。 静電容量が大きいほど、つまりが大きいほど、放電のスピードが遅く、再び充電が始まるときの電圧が大きくなっています。
が大きいと放電スピードが遅いのは、抵抗値が大きいと電流が流れにくくてコンデンサに蓄えられた電荷を消費するのに時間がかかるということでしょうかね。 が大きいと放電スピードが遅いのは、たくさん電荷を蓄えられる分、電流が多く流れてもコンデンサの端子間電圧の減少を小さく抑えられるということでしょうかね。
シミュレーションのコードは以下のgistにあります。
コンデンサが放電するとき(過渡状態)の電荷・電流・電圧の変化を表す式を導出する
以前、コンデンサが充電するときの過渡状態の式を導出しました。
今回は、充電されて電荷を蓄えたコンデンサが放電するときの式を導出します。
初期状態
回路は最初、下図のような状態であるとします。 回路は
から構成されています。 コンデンサに蓄えられた電荷は、図で見て上側が正、下側が負です。 このとき、図には書いていませんがコンデンサの端子間電圧はです。
電荷の式を求める
上図ではスイッチがOFFなので電流は流れていませんが、下図のようにスイッチをONにするとコンデンサに蓄えられた電荷が移動して電流が流れます。 このとき、時刻におけるコンデンサに蓄えられている電荷を、電流をとすれば、
- コンデンサの端子間電圧は
- 抵抗の端子間電圧は
となります。 なお、ここでは、下図のように電流の正の向き、コンデンサと抵抗の端子間電圧の正の向きを決めます。
電圧のキルヒホッフの法則より、コンデンサの端子間電圧と抵抗の端子間電圧について以下の式が成り立ちます。
コンデンサが放電するとき、電流が上図で定めた正の方向に流れることは直感的に明らかです。 しかし、
の式を用いて電流を電荷で表してしまうと、なので電流が負の方向(図の矢印とは逆の方向)に流れてしまいます。 なので、今回は左辺に負号をつけた
を用いることで、をで表します。
すると、キルヒホッフの式から
という電荷の微分方程式が得られます。 初期条件(時刻でコンデンサに蓄えられていた電荷がであったこと)を考慮してこの解を求めると、
となります。
電流の式
電流の変化は、
と
より、
となります。
電圧の式
抵抗の端子間電圧の変化はオームの法則より、
となります。
NANDゲートだけでNOT、AND、OR、NOR、XORを構成する
NAND回路の原理
先日の記事でNAND回路のシンプルな例を示しました。 今日はその回路が本当にNAND回路になるのかを確かめていきます。
説明には下図を用います。 上述の記事ではトランジスタの回路例とスイッチの回路例を載せましたが、今回はスイッチの回路例だけを用います。 なお、この記事では出力電圧が正ならHigh、ゼロ以下ならLowであるとします。
A=Low,B=Lowのとき
2つの入力がともにLow(つまり、スイッチがともにOFF)のとき、NANDの出力はHighになります。 このことを確認します。
スイッチがともにOFFのとき、電流は下図の赤矢印のように流れます。
スイッチ(入力A)がOFFであるため、左下の回路には電流は流れません。 このとき、点αの電圧はになります。 つまり、出力電圧はでありではありません。 したがって、出力はHighになります。
A=High, B=Lowのとき
入力AがHighで入力BがLow(つまり、スイッチだけがONでだけがOFF)のとき、NANDの出力はHighになります。
このとき、電流は「A=Low、B=Lowのとき」の説明で示した図のように流れます。 スイッチ(入力B)がOFFであるため、左下の回路には電流が流れないためです。 このとき、点αの電圧は先ほどと同様にになります。 そして、出力も同様にHighになります。
A=Low, B=Highのとき
この場合は、先程の「A=High, B=Lowのとき」と同じです。 違うのはOFFになっているスイッチの場所だけです。 左下の回路には電流が流れないため、点αの電圧がであることと、出力がHighであることは変わりません。
A=High, B=Highのとき
2つの入力がともにHigh(つまり、スイッチがともにON)のとき、NANDの出力はLowになります。
このときの電流の流れは下図のようになります。 今回は、上記の3つの場合と異なり、電流が左下の回路に流れています。
点αはスイッチとを介してグラウンドと繋がっています。 そのため、点αの電圧はとなります。 電圧がなので、抵抗が存在する右側の回路に電流は流れません。 抵抗に電流が流れるには電圧降下が必要ですが、今回の場合は抵抗の下側がグラウンド、つまりに接続しているため、同じくの点αからでは電圧降下を起こせません。
結局、この場合は出力電圧がとなるので、出力はLowとなります。
インバータの原理
インバータは直流を交流に変換する回路です。 この記事では、その原理について述べます。
次のようなHブリッジ回路について考えます。 負荷抵抗の端子間電圧が出力電圧です。
この回路で、スイッチとをON、スイッチとをOFFにします。 すると、下図の赤矢印のように電流が流れます。
電流は負荷抵抗を左から右へと流れているので、スイッチのある左側が高電位で、スイッチのある右側が低電位です。
次に、スイッチとがONで、スイッチとはOFFの場合を考えます。 すると、下図の赤矢印のように電流が流れます。
今度はスイッチとがONだった場合とは逆に、電流は負荷抵抗を右から左へと流れます。 つまり、スイッチのある右側が高電位で、スイッチのある左側が低電位です。
したがって、
- スイッチとがON、スイッチとはOFFの場合は左側が高電位で右側が低電位
- スイッチとがON、スイッチとはOFFの場合は右側が高電位で左側が低電位
というふうに、どのスイッチをONにするかで負荷抵抗にかかる電圧の方向を変えることができます。
この1と2を交互に行うことで、負荷抵抗に交流電圧をかけることができます。 つまり、4つのスイッチを操作することで、直流電源しかない回路から交流電圧をつくることができるのです。 これが、インバータの原理です。
おまけ(デッドタイム)
スイッチとがONの状態からスイッチとがONの状態へ切り替えるとき(あるいはその逆をするとき)、すべてのスイッチがOFFの期間(デッドタイム)を設ける必要があります。